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未配達の手紙

 @Tonberry

 

7時ちょうど、黒いトレンチコートを着て、杖をつき、白い杖を背負った男が郵便局に手紙を出しに来たところです。

 

"この手紙がおまえの元に届くかどうかわからないが、届くことを願ってる。 その答えは、おまえの心の中にも、俺の中にもあるが、人はどうしても一縷の望み、希望を持たなければならない。

 

この手紙を書いている今、俺は雪国の公館にいる。 奇妙な日だ。創世記の洪水のような雨が降り、俺は避雷針から20インチ離れて、雷で雲が割れるのを眺めている。 雷と稲妻が金床雲を叩き、パチパチと音を立て、まるで夜が来るまで空全体を密閉しているかのような、斬新な感覚だった。

 

夜になって、だんだん雲が晴れてきて、狼に歓迎された満月が北から昇ってきて、家の中を照らした。なんと美しい光景だろう。これを見たおまえも、きっと気に入ったことでしょう。 いや、少年の頃をここで過ごしたのだから、見たことがあるはずだ。

 

雪国と天空の城を結ぶ塔の頂上で、2つの都市を見渡しながら、おまえは以前、正と誤について尋ねたことがあったね。 今でも、正確な答えは出せない。 世界中のすべてのものは、その固有の輪廻転生のシステムを持っており、それは俺たちの想像をはるかに超えた、走り、歩むコードをほのめかしているのだ。 それは、人間の推測を超えた、目に見えない、征服できない力の制御である。 それを理解したときには、もう遅かった。

 

答えを教えようと思って全力で城に戻った時には、結局手遅れだった。 到着してみると、城の石造りは相変わらず立派だが、石の割れ目はまるで呪いをかけられた時の傷のようだ。 アトロポスは命の糸を切ってしまった・・・・・・。

 

シロ、おまえは可能性を考えたことがあるかね。世界は救われたがっている、だから何かを犠牲にしなければならない。 おまえが知っているすべてが世界の支配下にあるという問題について考えたことがあるか。それは、現在の壊れた状態に満足できなくなったから、より高い魔法の領域へとおまえを導く、完全なものにしたい、あるいは完璧なものにしたい、ということだ。 俺たちは、世界の起源である本来の知恵に到達したと思ってるが、実はそれはモリアの糸を紡いでいるに過ぎないのです。 俺たちは、世界の「法則」が定めた軌道から自由になったつもりでいるが、それは「法則」が書いた軌道をたどることに過ぎないのだ。 俺たちはまだ運命に、いわゆるルールに縛られているのだ。

 

そうだね、シロ、この推測が正しいか間違っているかは、はっきりした答えは出せない。 以前の俺であれば、世界を相手にギャンブルに興じたかもしれないが、今の俺はあの頃の俺とは違う。 もし、世界が完全を得ようと思ったら、どうなるのでしょう? 陽は陰、生は死、死は生。 死あるのみ、生なし、その沈黙に、これが天の道か......。

 

すまないが、俺はあらゆる道徳法則から逸脱し、何とか輪から抜け出した以前のような「怪盗」ではないのだ。 今の俺は臆病で、卑怯だ、この世界にはまだ俺の愛する人、大切な人がいるから......おまえが俺に何を言おうとしているのかわかる、人間の力ではモリアを当てることは不可能だ、もしかしたら俺は紡ぐ糸に操られているのかもしれない、あるいは俺たち二人はそうかもしれない、しかしこの賭けで俺は負けるわけにはいかないのだ。

 

大切な人からの裏切りほど辛いものはないから、俺の裏切りを許してほしいとは言わない。 俺は単に、俺たちの答えを検証するための時間を少しでも稼げればと思ってる。 モリアと戦えるものがあるとすれば、それは「時間」だが、おまえが生き残れることを祈っている・・・・・・。"

 

これは無署名の手紙だ。 残念ながら、地図にない場所なので、住所にはたどり着けなかった。 しかし、送り主の連絡先も記入されていない。 だから、ここに置いておかなければならない・・・。

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